至難の技
三寒四温と言いながらも、
朝晩の寒暖差が激しいこの季節、
出かけるのに、何を着て行こうか、迷いためらう。
さすがに真冬のダウンは手にしないが、
いっそコートをやめて、
マフラーだけでいこうかと思いつつも、
夜は北風が吹いて冷え込むという予報を耳にすると、
とたんに怖気づいて、つい防寒服に目が行く。
若い頃なら、何よりも見かけ、しゃれっ気が優先して、
こんなことで思い悩むことはなかったが、
高年世代に忍び寄る「加齢」という現実は、
衣食全般にわたって、自分の暮らしぶりを変えつつある。
人は人、自分らしく生きればいい、と自分に言い聞かせ、
実際、そのような生活を送っているつもりだが、
「生涯青春」を貫くのは、「至難の技」であることは確かなようだ。
今夕は、知人のオープニング・レセプションに出かけるつもりだ。
個展の主は、私よりも五、六歳若いのだが、
若者顔負けの、精力的な創作活動を展開していて、
その仕事ぶりを見ていると、芸術活動に年齢は関係ないことを教えられる。
思い返すまでもなく、なんだかんだと言いながらも、
こうして身のまわりに、
老いなどどこ吹く風、と制作に励む仲間がいるというのは、
何ものにも代えがたい刺激ではあろう。
逆に言えば、自分の生き方もまた、
彼らに何らかの彩りを与えたり、風を送っていたりしているのかもしれない。
それを思うと、うっかり弱音を吐いたり、年寄りくさく振舞うのは、
自分のみならず、まわりの人にも迷惑をかけることになりかねない。
自分の命は自分のものにはちがいないが、
自分だけのものではないことも、確かだろう。
さて、ところで、きょうのいでたちである。
あれこれ、思案しているうちに、にわかに部屋が暗くなってきた。
ベランダに出てみると、
青空は灰色の雲に隠れて、心なしか気温も下がってきた気がする。
やはり、ここはやせ我慢を張らず、
お天道様のお告げにしたがうべきだろうか。
久しぶりの外出に、何とものどかな時間を過ごしている自分に、
苦笑するばかりである。
2017/03/03 14:30 | COMMENT(0) | TRACKBACK(0)
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